寒くなってくるとキャンプで人気高いのが薪ストキャンプ。SNSやYouTubeでも、カッコよく映えるのでやってみようという方も多いと思います。でもそんなに簡単に薪ストーブを購入してよいでしょうか。設営撤収・メンテナンスがめんどくさい!と薪ストーブを手放したり、薪ストキャンプをやめてしまうキャンパーさんが増えています。そこで石油ストーブで10年以上冬キャンプを経験してきた私が、薪ストーブを購入し冬キャンプで実際に使用してみました。結論からいうと、評判通りの暖房効果を体験しつつも、薪ストーブ独自の欠点も多く不便を感じました。つまり、薪ストキャンプをやめてしまう気持ちがよく分かりました。そこで今回は薪ストキャンプをやって感じたメリット・デメリットをそれぞれまとめ、さらに冬キャンプで経験してきた石油ストーブとの比較、そしてキャンプインストラクターの視点から気づいたことなどを解説します。そして最後に、「結局、キャンプで薪ストーブはやめた方がいいのか?」という疑問について私の見解をお伝えします。
薪ストキャンプってめんどくさい?
うかつに手を出すとヤケドしますよ
テントで火気使用は禁止です
まずは前置きです。各メーカーで幕内(テント内)の火気使用は禁止されています。
暖房器具をテント内で使用することにより火事、一酸化炭素中毒などの事故を引き起こす要因となります。場合によっては死亡事故につながるので幕内は火気使用禁止としています。
コンロの使用による、酸欠や一酸化炭素中毒の危険があるだけでなく、テントに引火することもあります。 これらはいずれも重大事故につながるため、テントの中では燃焼器具類の使用はやめましょう。
日本キャンプ協会 https://camping.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/06/safety4.pdf
私自身は石油ストーブや薪ストーブを幕内で使いますが、リスクを把握したうえで安全を意識して使用しています。当記事はテント内での火気使用を強制するものではありません。使用に起因して生じる結果はユーザー責任であり、当記事では一切の責任を負わないものとさせていただきます。
薪ストキャンプのデメリット
今回は薪ストキャンプをやめたくなる理由というテーマなので、デメリットから挙げていきたいと思います。石油ストーブを使用したキャンプに比べて、薪ストーブでキャンプした場合のデメリットは大きく分けて4つです。
- 事前準備に手間と費用がかかる!
- 温度管理と火の管理がめんどくさい!
- 薪燃料と灰処理缶がかさばる!
- 設営撤収、重量ともに石油ストーブの倍以上かかる!
薪ストーブに憧れて購入するも、長く続かずやめてしまう理由がこれです。
買ってキャンプしてみて分かったデメリットです!
事前準備に手間と費用がかかる!
石油ストーブは購入して燃料入れれば使用可能ですが、薪ストーブは事前準備が必須です。たとえば、薪ストーブ本体を購入しても他に薪掴み用トング、耐熱手袋、マッチ&ライター、薪、灰入れ、焚き火シートが必要です。これだけでも石油ストーブの倍の道具が必要なのが分かります。
また煙突が高温状態かつ火の粉が飛ぶため、テントは難燃性であるコットン製かポリコットン(TC)製に限られます。煙突ポート付きの難燃性テントが最も安全です。これに対し、ポリエステル製の場合は穴が空いたり溶けてしまう可能性が高く、テント丸ごと燃えてしまう可能性も否定できません。よって薪ストーブには向いていません。
薪ストーブ購入の他に専用テント購入なんて大変ですよね
さらに、薪ストーブ向きのテントを用意したとしても耐熱温度の関係で煙突ガードが必要です(一部不要なテントもあります)。
その他にも、雪中キャンプでは沈下防止のために木板を用意するなど、薪ストキャンプは石油ストーブに比べて、事前準備に費用と手間かかります。
薪ストーブ本体だけでも高額です。私は総費用10万超えました・・・
温度管理と火の管理がめんどくさい!
薪ストーブの点火方法は焚き火と同じ要領で行います。小さな火から大きな火へ、だんだんと炎を大きくしていく方法です。これは石油ストーブに比べて手間と時間がかかります。また薪を入れればドンドン燃えますが、高温状態を続けると薪ストーブ本体が損傷します。よって、給気口や煙突ダンパーを調整しながら温度のコントロールが必要です。そして目を離すと炎が弱くなっていたり消えてしまうこともあります。このことから、石油ストーブと比べて温度や火の管理がめんどくさいと感じてしまいます。
また煙突も高温になると煙突ガードでは防ぎきれず、難燃性のテントでも焼き焦がしてしまう場合があります。適温は200℃~350℃となっているため、ハラハラしながら温度計と煙突ガードを見ることも多々ありました。
ふと目を離して気づいた時に温度計が350℃超えてる時は、うわぁ~ってなります!
薪燃料と灰処理缶がかさばる!
薪ストーブなので当然燃料となるのは薪です。現地で購入する場合は価格と薪の品質に左右されるため、持ち込みが基本です。気温にもよりますが冬キャンプ一泊分で下画像コンテナ一つ分は消費します。つまり、薪ストーブの燃料は石油ストーブよりずっとかさばります。
暖房の主燃料となるので焚き火のように減らせません。ファミリーキャンプなど荷物が多くなる場合には厳しい選択となるでしょう。
また、薪ストーブは焚き火と同様、灰(燃えカス)が残ります。キャンプ場によっては処分も可能ですが、私が知る冬キャンプが出来るキャンプ場の大半は、ゴミ・灰は持ち帰りになります。
そこでキャンプ場によっては薪と灰を持ち帰るパターンもあることを想定しなければなりません。つまり、灰処理専用の携行缶も必須となるため、荷物がさらに増えてかさばります。
設営撤収、重量ともに石油ストーブの倍以上かかる!
これまで私がキャンプを経験してから10年以上、ずっと薪ストーブに手を出さなかったのは、これが一番大きな理由です。そして実際に薪ストキャンプをやってみたら、予想通り設営撤収時は石油ストーブに比べて倍以上かかりました。
設営撤収それぞれの段取りにこれだけ手間がかかります。さらに製品によっては10kg近くの重量があり、薪燃料と合わせると重量は石油ストーブの倍以上、運搬だけで重労働です。設営撤収と運搬の負荷が高い薪ストキャンプ、おそらく、キャンパーさん達が薪ストーブをやめていく理由は、これが最も多いのではないでしょうか。
天気悪い日の設営撤収はホント勘弁してほしい!
薪ストキャンプのメリット
さて、これだけ連ねた薪ストキャンプのデメリット。それに対して得られたメリットはどうだろうか?そこで、薪ストーブを冬キャンプでやってみて感じたメリットを大きく分けて4つ紹介します。
- 暖房効果がトップクラス
- テントにこもりながら炎の揺らぎで癒される
- 高火力の熱源で料理に有効活用
- SNSなどで写真映え、非日常体験を強く感じられる
テレビやSNS、YouTubeでも多くのキャンパーが薪ストーブを使う理由はこの4つだと思います。私もクチコミやTwitterのタイムラインを見ていても、このメリットに対して魅力を感じている方が多いように感じます。
どれも石油ストーブより強く感じたメリットです
暖房効果はトップクラス
寒い時期に使用されるキャンプ用暖房機器は電気ストーブ、ガスストーブ、石油ストーブ、薪ストーブと多岐にわたりますが、その中でも薪ストーブが最も暖かいストーブであると断言できます。熱源の面積が広く、かつ遠赤外線効果も高いことからテントの中にいるだけで顔が火照るような暖かさがあります。具体的には直径約4mの円錐形テント(いわゆるワンポールテント)で外気温マイナス10℃の環境であった場合、幕内を20℃前後に保つためには石油ストーブは2台~3台に対し薪ストーブは1台で維持できます(テンマクデザインのサーカスTC&ウッドストーブLの場合)。それぐらい薪ストーブは暖房効果が高いです。
また他のストーブに比べ、薪ストーブはドラフト効果により、二次燃焼を発生させることで効率よく高火力を発揮することができます。また煙突による排気効果により一酸化炭素中毒のリスクも低くなります。
テントにこもりながら炎の揺らぎで癒される
冬キャンプ、特に雪中キャンプでは北に行くほど気温が極端に低くなるため、外で焚き火を行うことが少なくなります。またテント内で焚き火はリスクが高すぎて出来ません。ところが、薪ストキャンプではテント内で焚き火と同じことが体験できます。薪ストーブのタイプにもよりますが、正面ガラス、サイドガラス等があれば、テント内で暖まりながら炎の揺らぎをゆっくりと楽しむことが出来ます。
火による癒し効果については学会でも研究されており、リラックス効果やストレス軽減など、多岐にわたる効果が確認されています。
川のせせらぎ、雲の動きなど自然界における動きのある現象は、注意を引きつつも無意識で見ていられるため、集中力が回復するなどの癒しの効果があるが、暖炉の火にも同様の効果があると考えられる。
火のある暮らしの効用研究 : 暖炉によるコミュニケーション増進効果
松波 晴人, 羽生 和紀 https://www.jstage.jst.go.jp/article/mera/10/1/10_KJ00008933490/_article/-char/ja/
おそらく、多くのキャンパーがこれに憧れてるのかも!私もそのうちの一人でした(笑)
高火力の熱源で料理に有効活用
昔から暖炉のある家庭ではその熱源を有効活用して料理を作っていました。キャンプ用薪ストーブも高火力の熱源を活用して多彩な料理をすることが出来ます。薪ストーブでは煮込み料理はもちろんですが、他にも焼き料理、蒸し料理、揚げ料理など多岐にわたる料理を作ることが出来ます。ゆっくり料理を作りながら炎を楽しむことが出来るのは薪ストキャンプの醍醐味といえるでしょう。
またダッチオーブンを使った煮込み料理や蒸し料理、スキレットを使った焼き料理や揚げ料理など鋳鉄製のキャンプクッキングギアとの相性がとても良いのでおススメです。
グループキャンプなら鍋物、ソロならスキレット料理など、多種多様な料理が楽しめますよ!
SNSなどで写真映え、非日常体験を強く感じられる
キャンプブームとはいえ、ハードルが高い薪ストキャンプする人は少ないです。その中でSNS系キャンパーやキャンプ系YouTuberのアップする写真や動画はとてもカッコよく、そしてキャンプ映えします。
薪ストーブが特別感を演出してくれるため、SNSやYouTubeでも反応がよく、自己満足感が高まることでしょう。
私のキャンプツイートも薪ストーブ系は反応が良いですね
また、キャンプとは日常生活では感じることが出来ない大自然との共生または原始的生活様式を楽しむことも魅力のひとつと言われています。そこで、薪ストキャンプスタイルは自然の中で得た薪燃料や原始的な炎を扱うことで石油ストーブよりも、より自然を身近に感じ、原始的生活様式に近いスタイルといえます。
このことから、日常ではあり得ない「非日常体験」を強く感じることが出来ると感じるのが薪ストーブの魅力だと思われます。
これに関しては賛否両論ありますが非日常体験に刺激を求めてるなら、薪ストキャンプはうってつけでしょうね
結局、キャンプで薪ストーブはやめた方がいいのか?
いかがでしたでしょうか?よくある薪ストーブのおすすめ記事とは違う切り口で解説してみました。私も改めて記事を読み直してみたら、予想以上の手間と費用がかかったことが分かり、薪ストーブを使うことをやめたくなりました(笑)
では、結局、「キャンプで薪ストーブはやめた方がいいのか?」。このことについて、今まで述べたメリット・デメリットをもとに、私の見解について説明していきます。
デメリットは経験則でカバーできる!
実際に薪ストキャンプをしてみると、経験を重ねていけば難しい手順も楽しめるようになるのではないかと思いました。まず、デメリットの一つである事前準備については手間と費用がかかりますが、それは一度きりです。また温度や火の管理、灰処理は慣れれば意識することなく管理できるようになるでしょう。あとは設営撤収の時間と薪燃料のかさばりです。これらについては、ファミリーキャンプでは運用が厳しくなりますが、車で行くソロキャンプなら工夫次第でいけると思います。
薪ストキャンプは自分のキャンプスタイルで!
先日、薪ストキャンプをしている私とキャンパーさんの話題でこんな会話がありました。
薪ストーブすごいですね!
憧れますよ~!
いやいや設営撤収がめんどくさくて。このキャンプが終わり次第、薪ストはお嫁に出そうかと。
この時は本気で薪ストーブを処分しようと思っていました。でも翌日キャンプ撤収し自宅に戻り、次はいつキャンプが出来るか考えていたら処分のことなどすっかり忘れて、「薪ストキャンプはどうしようか?次回のフィールドで決めよう!」と薪ストキャンプを選択肢に含めて新たな冬キャンプを模索している私がいました。めんどうではありますが、一つのキャンプスタイルとして選択肢に入れるのはアリだなと判断したからです。
結局、薪ストキャンプをやめた方がいい?
答えは【自分のキャンプスタイル】です!
確かに準備から設営撤収まで大変ですが、薪ストキャンプの魅力はそれを上回るものがあることも事実です。また『手間がかかることが、キャンプの醍醐味だ!』という人もいるでしょう。つまり、薪ストキャンプをやるかどうかは自分の性格やキャンプスタイルに反映できるかがカギになるということです。
最後に購入検討されているキャンパーさんへ
キャンプ用薪ストーブの導入について費用や手間ひまをかけてまで導入するべきか、思い悩むキャンパーさんは多いと思います。安易に流行りに乗って高額な薪ストーブを購入し、大きな後悔は抱えたくないですよね。また、私のようにデメリットも全部足して醍醐味だなんて乱暴な結論では納得いかない方もいると思います。
そこで薪ストーブを購入する前にまずは次のことをやってみてください。それは薪ストーブ以外で冬キャンプを楽しみ、自分らしいキャンプスタイルを見つけることです。冬キャンプは焚き火、石油ストーブ、電源サイト利用したり、ギアの数を極限に減らしたULスタイルなど、いろんなスタイルがあります。また暖房以外でも冬キャンプだからこそ体験できる魅力がたくさんあります。冬キャンプの詳しいノウハウについてはこちらの記事をご覧ください。
私も幼い子供たちと一緒にたくさん冬キャンプを楽しみました!
冬キャンプをたくさん楽しむことで、その魅力を実感し、繰り返される経験によってキャンプスキルが上達し、薪ストキャンプは新たなスタイルとして受け入れることが出来るようになるかもしれません。ぜひ、いろんな冬キャンプフィールドに出掛けましょう。そしていつか、薪ストキャンプを存分に楽しむことが出来ますように。この記事がキャンパー皆さんのお役に立てることができれば幸いです。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました!
楽しいソトイクライフをお過ごしください。
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また、薪ストキャンプに挑戦してみたい方向けに後悔しない薪ストキャンプの方法についてまとめ記事を書きました。よろしければこちらの記事を読んでみてください。
コメント
コメント一覧 (4件)
薪ストーブの手間がよくわかり参考になりました。ありがとうございます。
温度管理と火の管理は想定外で、薪も思ったより必要になるのですね
虫と人が減る冬ソロキャンプをよくしていますが、寒さもキャンプの醍醐味ですよねw
せっかく自然の中にいるのに、テントにストーブで完全お籠りはなんか違うなぁとも思っていたので、自分のスタイルとはやはり合わないと思いました。
kenzさん、こんにちは(^^)/
当記事にコメントありがとうございます。
おっしゃる通り、薪ストキャンプは管理が手間で
薪の消費量もおこもりスタイルですとかなり必要です。
(買い物かご1つは消費します(;’∀’))
私も同じく、ずっとお籠りはスタイル的に合わないので
薪ストキャンプは当分取り組むことはないだろうという結論です(^^)
自分らしく、それぞれのキャンプで冬を楽しむのが一番ですよね。
kenzさんのお役に立ててホント良かったです(^^♪
wishさんこんばんは!
私の場合は自宅に薪ストーブがあるので冬キャンパーを啓蒙してきた割にキャンプでの薪ストーブ導入は比較的遅くなったのですが、いざキャンプで薪ストーブを入れてみると自宅の本物とは似ても似つかないんだと驚愕した口です😅
色々ネガティブな事はありますが年に一、二回楽しむくらいが丁度良い感じです
劇団にひきさん
こんにちは(^^)/
私も貸しコテージで薪スト体験しましたが
こんなにも違うものかと(;’∀’)
ならばキャンプでは薪ストを石油ストーブに置き換えて
そこに使う労力は他に運用した方が
良いかなぁと正直思いました(;^ω^)
ただ文中にある通り、人によって価値観は千差万別
Twitter(X)でも反応は様々でしたので
やはり薪ストキャンプの可否は自分スタイルに
併せて判断するのが一番ですね(^^♪
私もいずれは、薪スト復活するかもしれませんし(゚∀゚)アヒャ