サバティカルのスカイパイロットTCはテント性能が優れ、コスパ最高のテントですが最強ではないことが分かりました。結論から言うと強風にとても弱いです。なぜなら、私は設営2回目にして強風が原因で、メーカーに修理不可と言われるほど大きくスカイパイロットTCが裂けました。つまり、スカイパイロットTCには独自性の高いデザインだからこそ、風に弱いという致命的な弱点があるということを発見しました。そして二度と同じことを繰り返さないように、風に対抗するためにはどうしたらよいのか、幕への加工や設営方法などについて考察しました。そこで今回は抽選1回目にして運良く当選し、そして設営2回目にして突風により裂けて廃品扱いという最悪の結果になった私が実際に設営した経験から学んだこと、キャンプインストラクターの視点から気づいたことをまとめ、スカイパイロットTCを購入したらやっておくべき5つの対策について解説したいと思います。
スカイパイロットTCとは?
この記事を読まれているということは、ある程度スカイパイロットTCの情報はご存じかと思います。詳細を知りたい方は別記事で紹介しているのでぜひご一読ください。
価格・性能どちらもバランスよく設計されていて
人気が高い理由がよく分かる記事です。
私は設営2回目で廃品になりました
スカイパイロットTCの弱点は風。これはネット情報で見かけました。ただ風に対する具体的な対策記事がなかったため、1回目の設営デビューで気を良くした私は何の対策も施さないまま、翌週にファミリーキャンプスタイルで出掛けました。場所は山間部キャンプ場、風予報は7~8mとやや強めの予報でした。
キャンプ場に到着してみると・・・
キャンプ場周辺映像がこちらです。(暴風音注意)
風予報より吹いています。目測でおおよそ12~15m程度でしょうか。ですが当時の私はキャンプをすることにばかり気を取られ、予報よりずっと強く吹いてることも気に留めることなく、これぐらい風が強くても設営は出来るだろうと思い込んでいました。これは完全に今までのキャンプ経験からの慢心です。
暴風の中の設営
そのまま予約したサイトに移動し設営。風吹き荒れる中、とりあえず幕体を降ろし設営の準備をしていきましたが、煽る風に遊ばれて思うように設営が進みません。そこで妻の手を借りながら基点4か所のペグダウン。出入口等はクローズしながらサイドウォールを固定し、あとはフロントポールを固定してガイロープ張れば終わりだ!…と暴風で進まない設営に焦る気持ちで支配され、全体を見ないまま設営を進めていると反対側のフロントポールを押さえていた妻から悲鳴が上がります。「パパ!テントが縦に裂けてる!!」
言葉が出ませんでした・・・これは入り口ではなくテントのつなぎ目です。大きくベンチレーション部まで裂けています。今までキャンプ10年以上やってきてここまで裂いた経験はありません。これではもう現地修復は不可能です。そして何よりファミリーキャンプにおいてムリは禁物です。ここでやっと冷静さを取り戻した私はキャンプを中止にしました。その後、失意のままに幕体を片付けて管理棟に声をかけると管理人さんが「嫌な思い出になっちゃったけど、また来てね」と優しく言われ泣きそうになりました。キャンプ場滞在時間40分。私のキャンプ史上最も短くそして最も苦い思い出となったキャンプでした。
管理人さん。またリベンジきますね~
サバティカルへ修理見積もり依頼で廃品決定
その後、サバティカルのサポートセンターに連絡し、修理の見積もりを依頼しました。その結果は修理不可。裂けた延長が長すぎるため、サポート側でも製品の耐久性を維持できないという回答でした。これによりコスパ最高の超人気テントは二回目の設営にして廃品となりました。このサバティカルサポートセンターとの経緯、顛末については別記事をご覧ください。
私のスカイパイロットTCは
廃品になってしまいました
スカイパイロットTCの弱点は強風!
外観、性能、価格すべてにおいてバランスよく設計された人気のテント、一見弱点はないように思えますが、このまま知らずに使用すると致命的な損傷を負う大きな弱点があります。それは「スカイパイロットTCが強風に弱い」という点です。この章では強風が弱点と思われる原因を私が実際に体験した記録をもとに詳しく解説していきます。
事前に要点知ってれば廃品にならなかった…
そもそも構造上、風に弱い
数あるテントの中でワンポール型シェルターに分類されるスカイパイロットTCはメインポール1本とサブポール4本の計5本のフレーム、その他に基点を決める4箇所のペグダウンの他に幕全体を固定するペグダウンとガイロープで構成されています。
これが設営撤収時間を短縮させるために考えられたものである反面、風に対しては幕の形状とペグダウンにより受け流すことで幕本体に風の負荷がかかる仕様となっています。これに対してドーム型シェルターはクロスフレーム構造なので風に対してクロスしたポールに風の負荷がかかる仕様です。
つまり、生地で受け止めるのか金属の棒で受け止めるのか。どちらが風に対して弱いのかはシェルター本体の外観でも一目瞭然かと思います。
メーカーの見解は?
スカイパイロットTCのメーカーであるサバティカルではホームページの商品紹介部分で下記の通り記載されています。
センターポールの頂点からボトムにかけて、直線で結ぶ四角錐のピラミッドラインをつくる事で、ワンポールシェルターの最大のメリットである設営の容易さと、耐風性をキープしています。
サバティカルホームページ https://sabbatical.jp/product/category/shelter/89200001
つまり、風は幕体で受け流して抵抗してるってことですね
この耐風性は強風に対しても有効なのか?と気になったので、いろいろ調べてみると取扱説明書に強風に対する記載がありました。
風が強いときは設営しない、設営時は突風に備えよ。つまり、メーカーとしても耐風性キープとは言いつつも風には弱いと暗に示しているということです。
幕体から分かる弱点の場所とは?
それではスカイパイロットTC幕体のどの部分が風に弱いのか検証していきます。これを詳細に検討することで風対策がより具体的かつ有効的に活用できます。
設営構造から分かる最も風に弱い場所
まず着目したのはスカイパイロットTCの設営構造です。スカイパイロットTCは4か所を基点としビルディングテープにテンションをかけたままメインポールで立ち上げ支える構造になっています。つまり幕体全体の強風に対する負荷はこの4本のペグとメインポール、そして幕体に分散されます。
また設営すると分かりますが、ツーポールシェルター型によくある単純なピラミッドラインではなく、スカイパイロットTCは独自性の高いデザインを採用しています。これは幕全体で風を真っ向から受けることなく、受け流すデザインとなっているからです。
ただこれは通常の強さの風の話です。記事冒頭の動画のような強い風に当てられた場合、風を受け流すには限界があり、ガッチリ固定した4本のペグと幕体本体にその負荷が重くのしかかっていきます。特にサイドウォールとフロントウォールの縫製箇所のライン(下図参照)このクロスしたラインが最も強風に弱い箇所ではないかと推察できました。
メーカーもここはウィークポイントになると考えているようで縫製は2重縫製加工、ペグダウン箇所は緩衝対策としてショックコードを採用しています。メーカーの耐風性キープという意味はデザインだけではなく、ここにも工夫されていました。
良い幕なんですよねホント
幕が大きく裂けるまでのメカニズム
それでは実際にこの幕体にあの時強風が吹いてどう裂けたのか原因を特定しながら裂けるメカニズムを振り返っていきたいと思います。まず4点基点のペグを強固に打ち込んだことにより幕に風の抵抗が増します。そこへさらに強風が吹きこみ幕体全体が風を受け流しきれなくなり、ペグダウンしていた4点基点のペグは抜けることなく、幕への負担がさらに増加。力の逃げ場を無くした風の応力は幕体下部から二重縫製の脇を徐々に裂け始めます。
ここで幕特有の生地、TC素材(ポリコットン)の欠点がでます。通常のテントで使われるナイロン生地はリップストップ加工されており縦裂きに強いんですが、TC素材は縦裂きにとても弱い。よって繰り返し吹き込む風によって、テント生地はまるで紙を裂くようにクロスライン沿いをきれいに縦裂きしていきました。
その結果、風を受けていた表側が2m以上裂けていて、また中に吹き込んだ風の逃げ道として裏側のクロスラインも50cm程度裂けるという大きな損傷を背負うことになりました。
裂けた幕の修理代金は10㎝単価で1000円以上です。また1.5m以上裂けると修理不可能とメーカーに宣告されましたので、この風によるダメージというのは本当に大きいことがわかります。
スカイパイロットTCでやっておくべき5つの対策
それでは以上の経緯を踏まえ、スカイパイロットTCのやっておくべき5つの対策を説明します。私と同じ轍を踏まないようにご購入いただいた皆様にはやっていただきたい対策です。
- 布専用補修テープで強化する。
- 現地の風力・風向きを考慮し設営する。
- ペグダウンを工夫する。
- 出入口のチャックを開放する。
- 強風時は設営しない、または風に強いテントを選択する。
1.布専用補修テープで強化する。
これはキャンプに出掛ける前に事前にやっておきたい対策です。すでに裂けやすい箇所は判っているので、そこを布専用補修テープで強化します。テープはテント専用の補修テープが一番良いかと思いますがTC素材(布)用が無いので、服飾用の補修テープが安価でおススメです。
この補修テープをスカイパイロットTCの裂けやすいクロスラインに貼り付けます。アイロン接着なので耐熱変化が気になる方は当て布を必ず使うようにしてください。また貼り付け箇所は写真の通りで幕体裏側にT字に貼ればよいかと思います。
ただこれは気休め程度かもしれません。また色が目立つのでデザイン性も欠けると思われる方もいるかと思います。もし本格的な服飾作成テクニックがある方であれば、補修テープではなく同色の当て布加工で強化することをお勧めします。
もし私がやるなら多少不格好でも
ミシンで当て布加工しますね。
裂けるよりはマシですから。
2.現地の風力・風向きを考慮し設営する。
これはキャンプをするのであれば、基本的に押さえておきたいスキルです。スカイパイロットTCは風に対しクロスラインが面する正面部と背面部が非常に弱いことが今回分かっています。つまり、現地に到着した際には風力と風向きを見て判断し、設営場所を検討します。
風向きを予報も含め確認したら、側面部を風に当てるような設営すればよいと思います。側面部には2箇所ペグダウンできる箇所があり、サイドポール×ガイロープもあるため比較的、強風に耐えれる仕様になるのではないかと思います。
3.ペグダウンを工夫する。
サイトの状況によっては風向きが分からず、巻き込むような風があるかもしれません。また風向きも予想できない突風があった場合は幕の向きだけでは対応できません。そこで4点基点のペグダウンも少しだけ工夫します。それは設営中に打つ4点コーナーのペグダウンと合わせてスカート部に補助ペグを打ち込みます。
スカート部には風ではためかないようにペグダウン箇所がありますので4点基点のペグ傍のスカート部も打ち込んでおきます。補助ですので、できればアルミペグが良いです。
なぜかというとスカート部はさほど強く縫製処理されていません。鍛造ペグ等により強固に打ち込むと、今度はスカート部が裂ける可能性もあります。あくまでも補助として軽く打ち込んでおきましょう。
それでも幕が裂けるよりは
いいんじゃないかなって思っちゃいます…
4.出入口のチャックを開ける
幕の設営時は基本的にすべてクローズ状態で設営します。これはマニュアルも記載されていますが、クローズ状態の方が綺麗に張れるからです。ただし、風が強いときは綺麗に張ることをまず諦めましょう。各出入り口のチャックをフルオープンし、幕が風の抵抗を受けにくいようにします。
開放しながらの設営は少しやりづらい部分がありますが、なるべく風の通り道を増やした方が風を逃がしやすくできます。また風がやんだ後にゆっくりとペグダウン位置やガイロープ締め直しすることにより、綺麗に張り直すことができます。ただこれはあくまでも強風対策ですので、風の無い日はフルクローズで設営しましょう。
5.強風時は設営しない、または風に強いテントを選択する。
最後の対策は強風時に設営をしない。何を言ってる、当然だろうと思われる方もいるかと思います。私も当時はまだ危機意識が低かったこと、キャンプ歴が長いことで慢心していたとキャンプインストラクターの勉強を終えた今では痛切に感じました。安心安全のキャンプを行うためには、事前に周囲の危険状況や天候の確認、予報を鵜吞みにせず当日現地での天気確認など入念なチェックが必要です。
強風が収まらない場合は風の吹きにくいキャンプ場に変えるか、勇気をもって中止の判断をすることが最高の対策だと思います。またもう一つの選択肢としてはテントの種類を風に強いテントに変えることです。冒頭の構造でも説明しましたがスカイパイロットTCなどのワンポール型シェルターに比べ、ドーム型シェルターであれば比較的防風性能が高いため、強風でもある程度安心してキャンプが出来ます。
テントは選べても天気は選べません。どのような天気でも安心してキャンプできるように2種類のテントがあっても良いかもしれません。実際、私がスカイパイロットTCが裂けて撤収した際にはドーム型シェルターは設営し終えキャンプを楽しんでいました。
私もスノーピークのランドロックで行けばよかったと後悔してます!
まとめ
今回は長い記事となりましたので最後は簡潔にまとめていきます。スカイパイロットTCは人気が高くコスパ最高のテントですが最強ではありません。それは構造上、特定の場所が風に弱く裂けやすいということが判りました。これは決してメーカーの責任ではなく、コスパ最高のテントだからこその欠点であり、あとはこの最高のテントを購入したユーザーが自分の創意工夫で最強のテントにすることで自分のキャンプスキルアップができると実感しました。また、今回はその対策として5つ挙げたうえで一つ一つ解説させていただきました。これにより、少なからず無抵抗のまま無残に避けて廃品回収となるような最悪な事態は防ぐことが可能になると思います。それに加えてもし仮に風で裂けたとしても多少の裂けであれば修理代が安く済みます。そして、テントが裂けたことにばかりにスポット当てましたが、場合によっては人身事故も起きる可能性のある状況でした。キャンプ、特にファミリーキャンプは安心安全にキャンプを行うことが最も望ましいというのが大前提です。皆が笑顔で楽しい思い出を作れるように今回の記事が役に立つことを心から願います。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございました!楽しいソトイクライフをお過ごしください。
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そして暴風で裂けたスカイパイロットTCの顛末ですが、有償新品交換という大ダメージになりましたとさ(泣)
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